REITに対する私の理解は『債券のアクティブファンド』というもの
こんばんは、ノディでございます。
株高が進むと高配当株と言えども配当利回りが下がってきます。
そしてそのような局面で必ず頭をよぎるのは
「REIT(不動産投資信託)はどうだろうか?」
という考えです。自分なりに答えを探してみました。
そもそも、なぜREITの利回りは株に比べて高い?
- 株よりリスク(標準偏差)が高いと市場が認識しているから
- 将来キャッシュフロー(賃料)の成長率が株より低いから
- 不人気だから(情報の非対称性とか、突発的な災害を評価できない)
のどれか、もしくは全てだと推測します。
1番は正直分かりません。賃料収入は安定して支払われるので、市場の空室率と金利の動向に対して機敏に反応しているのでしょうか?
ただ長期的な視点で言えば、需給以外の要素に落ち着いていくので、ここでは考えない事にします。
2番は納得が行きます。REITの分配金の中身は賃料ですが、オフィスや住宅の賃料収入は年を追うごとに必ず上がっていくようなものでは無いと思います。新築の建築物が日々竣工し競争にさらされているからです。
上昇したとしても、せいぜいインフレ率と同等か少し高い程度でしょう。
3番も重要です。現物資産である不動産には巨大災害のリスクが常に付きまといます。日本の都市では特に地震が心配され、REIT価格にそれとなく織り込まれていると考えられます。これまでの高利回りはただそれらのリスクが起こらなかっただけで、ただの幸運であるかもしれません。
また、不動産取引は素人目には不透明に感じますし、不動産は一品物で建物選定のプロセスも素人には分かりません。
これらの要因が重なり、REITは常に株より不人気で高利回りで有ることが多いのだと考えます。
対処できないのは賃料だけだが指標はある。
上記3点の内、
1番は長期投資であれば無視できる。
あくまでREITの金融商品としての本質的な価値は賃料というキャッシュフローに左右され、短期での価格形成に意味は無いため。
3番は技術によって対処可能な部分が多くあります。
近頃のオフィスビルならすべて新耐震ですし、火災に対する備えは消防法で守られているからです。
以前イギリスで高層アパートの火事が起きていますが日本では建物全体が火に包まれるような事はほぼ無いでしょう。外壁を窓から出た火が周らないように設計されています。
2番が重要。
REITは投資家から資金を募り、物件を購入し、他人に貸し出して賃料収入を得ます。
つまり、どれだけ安く稼働率の良い物件を手に入れるかが高利回りへの鍵となります。
ここで重要な指標と考えれるのは以下の3点
運用総資産に対する営業利益率
自己資本比率と資本コスト(金利)
稼働率
当然、営業利益率が高く、利払いが少なく、稼働率が100%のREITが優秀といえるでしょう。利回りが高くなっている時にそんなREITを買えば、左うちわで夢の大家生活!
そんな、うまい話はありません。
1年経つごとに平均築年数が1年上っていくのだ。
当たり前の事ですが、物件も歳を取ります。
でも言われるまでなかなか意識しませんよね?
日々進化している建築物
これから竣工する建物は、最新の防災設備とワーカーに優しい労働環境を市場に提供していきます。
2011年の東日本大震災以降は特に業務継続計画(BCP)に対応できる建築物が求められています。
エレベーターは間引き運転ですが地震後も稼働し、自家発電設備を備え、早期の事業復旧とサプライチェーンを指揮するヘッドクォーターオフィスたる機能を持っています。
命を守る建物で十分だった時代はすでに終わっています。
意匠はより高品位になり、労働者(主に上役)の士気を高めます。
REITが抱える建物は日々競争にさらされている上、バリューアップにも多額の資本的支出が必要です。
利益の90%以上を分配しているファンドならなおさら難しいでしょう。
日々、相対的に価値が減っていく物件ばかりのポートフォリオを見て、マネージャーは何を思うのでしょうか。
当然、築浅の物件を組み入れたいと思うんじゃないでしょうか。
でも、物件購入時に金融緩和中で価格がつり上がっていたら?
REITは増資を頻繁に行っている。
ヒューリックリート投資法人(3295)決算短信より抜粋
物件購入の原資とするためか、公募増資と第三者割当増資を頻繁に行っているREITが結構多いです。
利益の殆どを分配している上、安易に借り入れを増やすと金利上昇で大ダメージを受けるからです。
自己資本比率はざっくり50%というREITが多い印象です。
金利の低下は投資家の期待利回りを押し下げ、物件購入を促す。
ヒューリックリート投資法人の分配金利回りは4.2%
自己資本比率は51.2%です。
とすると、利回り2%台後半の物件を購入すれば、自己資本に対する利益率は分配金を出すのに十分な水準に届くと思いませんか?
投資家から募ったお金と同額の借り入れを行って、物件を買えば良いわけです。
それを見越しているから市場では不動産の価格が上昇(利回りは下落)します。
でもこれを許しているのは分配金利回りを押し下げている投資家自身です。
金利が下降している局面ではREITの利益率も下降します。
気がついたら数年前なら信じられないほど割高で買った低利回りの物件がずらっと並び、金利が上昇に転じたら利払いが利益率を抑える事になります。
REITは踊るしかない
では不況になって十分な利回りを確保できるまで、じっと待てば良いのですが、いつ不況になるか誰にも分からない事や、好景気が長引けば組み入れている物件価値の下落が許容できる範囲を超える可能性があります。
マネージャーはどうせ他人の金と思って、市場に遅れまいと物件を買い続けることになるのです。
その結果、当初は高利回りだったREITも景気に踊らされ、徐々に増資と物件購入で本質的価値と利回りを下げていき、不況時に投資口価格の大幅な下落に見舞われる可能性が高いと考えます。
私のREIT投資に対する考え
金利に追従する性質を持ち、賃料の大幅な成長が見込めない事が考えられるため、債券のような商品であり、そのファンドの運営方針、物件選定基準が不明確な事から、アクティブファンドのようなものと見なしています。
現在の株よりちょっと良い程度の利回りではとても投資対象にはなりません。
例えば金融危機の時に利回りが9%を超えたら購入を検討しますが、あくまで短期投資として、出口戦略は常に意識しておく必要があると考えます。
それ以外の時で高配当がどうしても欲しくなった時は、公益株で対応します。ナショナルグリッド(NGG)などです。
でもシーゲル氏によれば公益事業セクターはリターンが低いので優先度もとても低いです。